NTi Audio スイープ測定についての考察(実測編)
NTi Audio スイープ測定についての考察(実測編)
今回はスイープ測定について考察・基礎編 ( こちらから) に続く実測編となります。実測編ではオーディオ・音響システムに応用できる実用的な測定アプリケーションをご紹介します。正しいスイープ測定メソッドを選択するだけでなく、測定対象に最適なスイープパラメータを選択することが重要です。本稿では、測定に役立つヒントをアプリケーション別に取り上げます。
オーディオ&音響機器およびシステムは可聴帯域だけでなく帯域外でも動作します。この帯域とは周波数とレベルの2つの範囲が該当します。したがって、オーディオ・音響システムの測定においてはこれらの範囲を考慮したパラメータ設定が必要になります。そして最もよく使われるのがスイープ測定です。
有効かつ正確に測定するため、設定すべき最も重要なスイープパラメータがスタート/ストップ周波数、増幅度、そしてステップ(測定ポイント数)と測定時間(グライドスイープで適用)です。
スピーカー等音響部品の測定
スピーカーなどの音響部品のスイープ測定では、重要な項目がいくつかあります。左図のdBSPL単位における周波数レスポンスだけではなく、右図のインピーダンス周波数レスポンスも重要でしょう。スタート/ストップ周波数は、スピーカーの仕様で定められた再生範囲をカバーするだけでなく、共振周波数より十分低いところからスイープさせることが重要です。
グライドスイープの時間はスタート周波数により異なります。周波数が低いほど電気機械的システムは長く励起させることが必要になります。以下のミッドレンジスピーカー測定では、測定帯域20 Hz~20 kHz、1.5秒のスイープが使われています。
この測定環境は自由音場ではありません。その結果発生した反響が、リップル波形として周波数レスポンス(緑の曲線)に現れています。これらは赤の曲線のようにスライドカーブアベレージング処理により取り除くことができます。
再生専用機の測定
再生専用機は信号経路に入力部がありません。すなわち機器から信号を出力している間は、同時にオーディオジェネレータから出力されたテスト信号を入力できません。このように信号経路が確立されていない場合、オーディオアナライザは入力信号に同期できません。一般的な再生専用機にはモバイルフォン、ブレットコンピューターなどがあり、そのほとんどがスピーカーを内蔵しています。
これらの機器の測定には、先ずグライドスイープテスト信号をWAVまたはMP3ファイルとして生成し、機器にロードします。そしてこのファイルを機器で再生してアナライザで解析します。オーディオジェネレータとアナライザ間の同期の問題は、グライドスイープテスト信号の前に固定のインターバルでショートトリガを付加させることで解決できます。アナライザはこのトリガを認識し、測定が可能になります。
トリガ付きグライドスイープ200 Hz – 20k Hz, 1秒
オーディオアナライザがトリガを検出すると、自動で測定がスタートします。グライドスイープの時間が分かっているので、アナライザは再生されているテスト信号に正確に同期します。
次の動画は、スマートフォンスピーカーを測定する方法を紹介しています。
オーディオ機器の測定
アンプやミキシングコンソールなどのオーディオ機器には、アナログやデジタルオーディオ入出力が装備されており、オーディオジェネレータやアナライザと直接接続することができます。以下の測定例では、オーディオミキサーのマイクロホン入力ステージを測定しています。上図は可聴周波数帯域に対する増幅度と歪みを、グライドスイープ20 Hz – 20 kHz, 500 msで高速に測定しています。下図は入力レベルに対する出力レベルと歪みを、アンプリチュードスイープ, -100 dBV~-20 dBVで測定しています。
オートマチック・ゲイン・コントロール(AGC)やレベルリミッターなどのダイナミックコントロールを装備するシステムでは、測定する際に注意が必要です。これらの被測定器は、測定スタート前に動作を安定した状態に保つ必要があります。そのため、例えば1秒のプリトーンの付加されたスイープ信号を使用します。
1秒プリトーン付きグライドスイープ20 Hz – 20 kHz, 0.5秒
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