YAMAHA PAお役立ち情報
今回は、ヤマハのサブウーファーシステム「DXS18、DXS15/12mkII、DXS-XLF、CXS-XLF*シリーズ」で使用可能な「カーディオイドモード」についてご紹介いたします。
*CXS-XLFシリーズのカーディオイドモードはヤマハのパワーアンプリファイアー「PXシリーズ」、「PC-D/DIシリーズ」と併用時にのみ利用可能です。
最近耳にするカーディオイドモードってなんだろう…
最近のサブウーファー製品のカタログや仕様に記載されている「カーディオイドサブウーファー」、「カーディオイドアレイ」等を目にされた方もいらっしゃるかと思います。この機能は「サブウーファーの後方への音量を減少させる」ことで、前方方向のみへの拡散とし、指向性を形成させるテクノロジーです。今回の『PAお役立ち情報』では、これがどのように動作するか?と「メリット」と「デメリット」について簡単に説明します。
スピーカーの指向角度を制御する場合、再生する周波数の「波長」が密接に関係し、低い周波数は波長が長く、高い周波数は短いため、低い周波数の指向性を制御しようとすると、非常に大型なキャビネットが必要になり、実用的では無くなってしまいます。
そのため、一般的なサブウーファーはキャビネット前方への音量とほぼ同等な音量が後方でも受音可能な「ほぼ無指向性」の特性を持っています。
近年DSP制御のアンプの普及によりフィルターやディレイ設定がアンプにプリセットできるようになりました。このプリセット機能とキャビネットの物理的な配置の組み合わせにより後方への回り込みを「位相干渉によるキャンセレーション」を利用して打ち消す手法を用いて、指向特性が「カーディオイド(単一指向性)」状になる「カーディオイドモード」が開発されました。
この機能は、ヤマハの「DXS18、DXS15/12mkII、DXS-XLF,CXS-XLFシリーズ」サブウーファーで2台または3台の組み合わせによりアプリケーションに合わせて利用することができます。
上記の設置例では、一例として2台を前後に向けてスタックしています。これにより右のイメージ図のように前を向いたサブウーファーから放射されるエネルギーを後ろ向きに放射されるサブウーファーからの逆位相の音波によって打ち消すことで後方への音量を大幅に減少します。 これが「カーディオイドモード」の動作です。
下記左の「Normal」はサブウーファー1台の放射エネルギーをカラープロットで表しています。赤が高エネルギー、濃い青が低エネルギーとなります。
対して、右の「Vertical」は垂直に前後向きを変えて2段スタックした「カーディオイドモード」のプロットです。
濃い青部分が大きくなり、後方へのエネルギーが大幅に減少していることが分かります。
「カーディオイドモード」を使用する際には、アプリケーションによってメリットとデメリットがあることにご注意ください。
※一般的な音楽演奏や音楽再生で使用するL/R構成のサブウーファーを前提とした観点で記述しています。
カーディオイドモードのメリット
- ステージ内への回り込みが減少するため、ステージモニターやサイドフィルへの影響が少なくなる。
- イベント等で会場内にある他の不必要なエリアや他のステージなどへの低音の漏れを軽減できる。
- 屋外などでの使用時に近隣の住宅エリアへの低音の音漏れを軽減できる。
- メインシステム、サイドフィルの後ろにモニターブースがある場合、モニターエンジニアへの低音エネルギーを減少できる。
カーディオイドモードのデメリット
- 2台を前方に向けて並べた時と比較すると前方への音量が上がらない、ほぼ1台分相当の音量。
- メインシステムとして使用時に客席にキャスターやアンプ、コネクターパネル部などが見えてしまう。
- 後方向きのサブウーファーにも独立したアンプチャンネルが必要になる。
現在は1台のキャビネットで、前方、後方向きのドライバーを搭載する「カーディオイド」専用設計のサブウーファーも市場に存在しています。これは、外観がスッキリし、前記のデメリットは減少しますが、引き換えに大型で重いキャビネットとなってしまいます。ヤマハのサブウーファーシステムで利用可能なアンプのプリセットと配置の組み合わせによる「カーディオイドモード」では、「音漏れを気にしなくて良い、大音量優先」の現場では「通常モード」で使用、「音漏れにシビアな環境」や「ステージ内への回り込みが大きい」などでお悩みの際には、「カーディオイドモード」を使用する、というような使い分けが可能です。
ヤマハのサブウーファーシステム「DXS18、DXS15/12mkII、DXS-XLFシリーズ」はキャビネット内蔵のアンプ、「CXS-XLF」は対応するヤマハのパワーアンプリファイアーで「カーディオイドモード」が簡単に設定できるようになっています。使用に際しては、スピーカー、パワーアンプリファイアーの取扱説明書に記載の設定方法をご参照ください。
※ご注意:
「カーディオイドモード」は対応するサブウーファーのキャビネットサイズ、設置台数と配置とそれに対応するパワーアンプの設定を組み合わせることで実現可能な機能です。対応していないサブウーファーを2段スタックし、後ろ向きキャビネットの極性を反転させるだけでは同様な効果を得ることができません。
このような「お役立ち情報」はヤマハプロオーディオサイトの「よくあるお問い合わせ(Q&A)」に多数掲載されていますので、是非一度ご参照ください。
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